“杉田スミレ”をアニメに迎え入れるまで
2021年2月17日発売の『週刊少年マガジン』(講談社)。漫画に突如現れた実写の“杉田スミレ”。発売後すぐにネットで話題となり読者に強烈な違和感とインパクトを残した。そしてTVアニメ炎炎ノ消防隊 参ノ章 第2クールの20話にて、アニメでも“杉田スミレ”が登場した。
アニメではどのように表現していくのか期待される中、南川監督、本庄谷アニメーションプロデューサーは、どのようにして本話数にたどり着いたのか。さらに“杉田スミレ”を演じていただいた本木幸世さんにもインタビューを実施しました。
・話題作をどうアニメに落とし込むか――制作決定までの道のり
Q. まずはこのシーンを始めてみた時いかがでしたか?
南川監督:弐ノ章の制作をしていた頃でしたね。当時から話題にはなっていましたので心構えはしていました。今回のように実写を組み込むのか、それとも違う形のメタ表現をするのか、などアニメの中で3次元どう表現するかなどいろいろなことを考えたのを覚えています。
本庄谷P:参ノ章の制作に入ったとき、まずこの話数をどういった形にするかを考えました。話題になった話数ですし、せっかくなので真っ向勝負してみようじゃないかと監督とも話しまして、私の知り合いで実写映像を制作するスタッフに心当たりがあったので話してみよう、といった形でしたね。
Q. どのような順序を経て制作していこうとなりましたか?
本庄谷P:実写映像を制作するスタッフたちが受けてくれることになりまして、まずはその話数のシナリオを完成させて、尺感を測ります。その後、ディレクターたちと話して、絵コンテを描いてもらいました。そしてビデオコンテを作っていただき、撮影という流れですね。
南川監督:すごくノリノリで作ってくださっていて、段々とイメージが湧いてきました。なるべく原作に近づけたいということで、コミックスに掲載されたときに撮影した講談社さんにロケハンにいってと、着々と準備をすすめていきましたね。
本庄谷P:そして大事な演者の方をどうするかという話になりまして、原作でご出演をいただいた方へお声がけをさせていただきましたが、当時、思わぬ反響があったこともあり、今回はお断りしたいとお申し出をいただきました。それでは新規にオーディションしようということでオーディションをすることとなりました。
Q. オーディションの選考方法はどのようなかたちでしたか?
本庄谷P:100名以上の多くの応募をいただいて、まずは書類審査からでした。そしてある程度絞ったところで、二次審査としてお越しいただいて、該当シーンを実際に演じていただいたり、踊りのようなものを踊っていただいたり。そして数名に絞って、原作の方々と協議の上決定といったかたちです。
南川監督:選考で大事にしていたところは、キャラクター「シスター炭隷」の雰囲気がでるか、ということでした。ただ嬉しいことに実際にオーディションを受けていただいた方々のやる気がすごくて。作品がメジャーであるということ、アニメという媒体に実写としてでることの珍しさなども相まって、皆さんいい演技をされていて、選考は悩みましたね。
本庄谷P:そして二次選考を経て、数名に絞らせていただき、原作の方々と協議の上、今回お願いさせていただいた本木幸世さんに決定いたしました。準備から含めて1年くらいかかったので、いよいよ撮影へ入りました。
・“杉田スミレ”を演じるということ――キャストインタビュー
そして実際に演じていただいた本木幸世さんにもインタビューを実施しました。
Q. このシーンを始めてみたときいかがでしたか?
本木さん:二次元の世界から突然実写シーンになるインパクトはかなりのものでした。不条理とも思えるこの演出を、とても斬新で面白いと感じましたし、同時に、アニメという表現に変わった時、この衝撃を演者としてどのように体現できるだろう、という事を考えました。原作の持つ余白というか、不気味な謎を残しながら、想像力を持って観てもらえるように演じたいと思いました。
Q. 実際に演じてみていかがでしたか?
本木さん:ドラマや映画で演じる場合は役のイメージを自分なりに膨らませ持込む事が多いですが、今回は初めから原作という豊富な情報がありました。絵コンテやビデオコンテなど、スタッフさんから資料もたくさんいただいていたので、演出イメージを事前に知る事ができたのは大変有難かったです。杉田スミレという特殊なキャラクターを、実在感のある演技と「型」としての演技両方でアプローチしながら作っていった感じです。
Q. 演じる際に意識したことや、監督たちからディレクションがあったら教えて下さい。
本木さん:あくまでもアニメの一部分である事を意識的に演じました。自分の顔を鏡に写しゴムのように自在に筋肉が動くよう研究したり。反対に無表情の中にどんな感情を入れられるか試したり。自分の肉声が作品に残らない分、表情の使い分けは繊細にやりたいと思いました。一方で、物語の核となる非常にスケールの大きい台詞を話すシーンでもある為、上滑りしないように時間をかけてそれぞれの言葉の意味を考えていきました。現場では技術的なディレクションが多かったように思います。
・アニメと実写、その“ギリギリ”を狙って――完成後の手応え
本木さん:こうして撮影された映像は、編集されアニメと融合するための加工といった工程を経て完成へと向かっていく。あらためて、南川監督、本庄谷アニメーションプロデューサーへアニメと融合した後のことを訪ねてみました。
Q. 実際に撮影して、アニメと組み合わせる際に苦労したところなどありますか?
南川:撮影後、編集をしていただいて、そこからはアニメと合わせるためのディティールを詰めていきましたね。アニメのVFXを担当している大橋さんにも協力いただき、ただ実写を流す形では、アニメ→実写→アニメとただの別パートとなってしまうため、あくまでアニメの中のいち演出となるように調整していきました。
例えば目のハイライト。実写映像ではライティングが目に合っているので、アニメと調整していくうえで、思ったより情報量が多かったんですね。それをどういうかたちで情報量を減らしてアニメと合わせていくか、などの調整をお願いしていきました。
本庄谷P:たくさん実写チームの皆さんには要望に応えていただきましたね。他にも、実写映像は1秒間 30フレーム、60フレームなどで撮るそうですが、アニメは1秒間24フレーム。実写チームから24フレームで撮影してみましょうか、など撮影からアニメとどう融合させるか、といった提案をもらったりと、アニメにどう寄せるかをたくさん考えていただきました。
Q. 完成した映像をみていかがでしたか?
南川:いやもう実写チームの皆様のお仕事が素晴らしかったですね。腕組みしてニコニコして、うんって言えるだけの状態になっていました。アニメと実写が融合しているんだけどインパクト、違和感はある、といった映像になっているのかなと。なかなかない挑戦なのでやはり不安もありましたが、想像よりも上の映像に仕上げていただき感謝です。関わっていただいた皆さん、ありがとうございました。
本庄谷P:アニメ側からはあまり言わずとも、実写チームの皆さんには意図を組んで取り組んでいただきました。様々な提案をいただき、実写映像を撮影してきたこれまでの経験値を活かして、実写なれではのこだわりもいれながら、アニメ的手法に落とし込んでいただきました。ただのアニメと実写でなく、ギリギリのラインをついた絶妙な映像に仕上げていただいて、
頼めて本当に良かったです。