炎炎ノ消防隊 ENN ENN NO SHOUBOUTAI 弐ノ章

SPECIAL

第2弾 松永康佑 アニメーションプロデューサー

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』に関わるスタッフのリレーインタビュー。
第2回は本作のアニメーションプロデューサーである松永さん。

キャラクターを「おいしく」することを考える

──壱ノ章の制作、おつかれさまでした。アクションシーンも多く、苦労も多かったのではと思いますが、振り返ってみて、いかがでしょうか。
優秀なスタッフに恵まれましたから、苦労らしい苦労はなかったです。たしかに制作スケジュールは、これまでの仕事と比べれば短いほうではあったので、業務上の「疲労」は否めませんでしたが……(笑)。

あるとすれば、キャラクターデザインの開発は印象に強く残っています。ちょっと、どなたから声をかけられたのかまでは忘れてしまったのですが、「大久保先生はキャラクターデザインにもしっかりと考えを持っている方だ」と事前に聞いていました。

キャラクターデザインが決まらない限りは、制作としてはどうしても進まない面があります。その不安もあるなかで、今回のキャラクターデザインと総作画監督を守岡英行さんにお願いしました。劇場版『傷物語』や『さよなら絶望先生』シリーズでも同職を務められてきた経歴をお持ちですが、守岡さんがされるお仕事であれば、きっと大丈夫であろうと自信を持っていました。

結果、上がってきたデザインが本当に素晴らしいのに加え、守岡さんの自由にさせてもらい、私の不安は払拭されましたね。

──多彩なキャラクターは本作でも大きな魅力です。キャラクターについて、特に気をつけていたことなど、あるでしょうか。
メインキャラクターだけでなく、サブキャラクターを“おいしく”するということです。もっとも、当たり前のことではありますが、敵・味方の関係なく、どのキャラクターも人気が出てほしいのですけどね。

『炎炎ノ消防隊』に限らず、どんな作品でも脚本を読み合わせる時から、「よし、このシチュエーションは、こういった映像にしておいしくしよう」と考えるようにしています。

シチュエーション単位で設計し、こだわりを詰め込む

──立石謙介プロデューサーへインタビューした際に「エッジの立ったフィルム作りにしたい考えがあり、それにdavid productionさんは応えてくれた」といったお話を伺いました。この「エッジ」について、松永さんはどのように捉え、制作に反映しましたか。
まず全体としては、原作のもつ表現を「なるべくそのまま出す」ということを意識しました。むしろ、原作を改変したり、独特なビジュアルにしたりすることのないようにしよう、とは心がけていましたね。

一つひとつのシーンにおいて考えていたのは、作品全体としての統一性よりも、個々のシチュエーションを重視する方針です。色彩、美術、アクションのプランといった細部に影響を及ぼす方針を、作品全体において統一させることよりも、あくまで各話のシチュエーションに合ったものを選び取るようにしたんです。

それにより、最初から最後まで、各話数ごとにわずかずつでも変化をつけた画作り、シチュエーションの見せ方ができました。結果的にその試みが、作品全体としても統一感を出せたのではないかと思っています。

──その「エッジ」が一つわかりやすく表れたのは、壱ノ章で視聴者にもインパクトを残した、Mrs. GREEN APPLEさんが奏でる音楽に乗せたオープニング映像ではないかと感じます。どのようなコンセプトがあったのでしょうか。
第8特殊消防隊の「チームとしての戦い」を表現したかったんです。そのために必要なのはアクションシーンだろうと考えていましたから、感じたと言うインパクトは、何よりそのおかげでしょうね。インパクトがあり、複雑な動きも伴うアクションシーンを作るには、絵コンテの段階からもアクションに関するセンスや造詣が必要です。

そこで、横山彰利さんに絵コンテをご依頼しました。横山彰利さんは『進撃の巨人』でも絵コンテ、演出を務められてきましたから、こちらのアクションを大切にしたい意図がしっかり活かされた結果だと思っています。

「細かすぎて伝わらない」でもこだわった

──作中ではキャラクターが躍動的に表現され、技や炎の表現などの「動きのこだわり」を随所に感じました。
ありがとうございます。

──立石謙介プロデューサーからも、随所に「停止しなければわからない」ほどの描き込みがあるとお聞きしました。
そうですね。実際、作っている側としても「観ていてわからないくらいかも」と思うくらいのこだわりもあります(笑)。立石さんはどんなシーンを挙げていましたか?

──第5特殊消防隊のプリンセス火華大隊長が「炎の桜」を繰り出すシーンです。花びらの中にも炎が描かれているのですが、その描き込みによって豊かな色彩が表現されていると。
たしかに、もはや細かすぎて気付いた方のほうが少ないくらいでは、と思いますが、第6話のヒバナのアクションシーンは、各スタッフが繊細な表現にこだわってくれたおかげで、とても絵力のある回に仕上がりましたね。

桜の花びらに関しては、八瀬祐樹監督からのアイデアでした。……とはいえ、聞いたときは僕も「もはやわからないのでは?」と思ったんです(笑)。でも、まずはなんでも一度はトライしてみようと思い、VFXの大橋遼さんに相談をしてみたら、作ってもらえました。

他にも、原作で盛り上がるポイントには、アニメにする際にも力を入れたつもりです。その他にもマニアックなほどの作り込みが潜んでいますし、制作陣ひとりひとりのこだわりによって、際立つシーンが実現できていると思います。少しでも多くの人に見てもらえると、スタッフの努力も報われます。

アクションシーンは弐ノ章でも注力を

──壱ノ章の人気ぶりを見て、どのような感想を抱きましたか。
どんな作品においても、プロデューサーとしては作品のあるべき姿、目指すべき完成形をイメージしながら制作を進めるかと思いますが、集団制作ゆえに、実際の映像が完成するまではわからないのが現実です。

だから、まずは何よりも第1話の完成映像を見て、「ホッとした」のが正直なところです。

──大久保先生の前作『ソウルイーター』との関連性など、意識した点はありましたか?
特にはないのですが、『ソウルイーター』はアニメもすごく面白いので、目指しても同じようにはなりませんから、僕らはむしろ『炎炎ノ消防隊』ならではの方向へ振り切っていこうと考えていましたね。

──壱ノ章を経て、「エッジを立たせる」コンセプトや、アクション、色使いなど、さまざまなスタイルが決まってきたかと思います。来る弐ノ章では、どのようなことにチャレンジしていく想定でしょうか。
弐ノ章でもアクションシーンは、壱ノ章と同じく、それこそ大喜利のごとく繰り出していけたらと考えています。

壱ノ章はシンラに関するエピソードが多めでしたが、弐ノ章はシンラ以外のキャラクターや、『炎炎ノ消防隊』の世界そのものが掘り下げられていきます。ぜひ、そのあたりを楽しみにしていただければと思います。

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