炎炎ノ消防隊 ENN ENN NO SHOUBOUTAI 弐ノ章

SPECIAL

第6弾 元木洋介 撮影監督

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』に関わるスタッフのリレーインタビュー。
第6回は本作に欠かせない炎を司る元木さん。

画面の中に混在する「炎」を様々に魅せたい

――まずお仕事内容について確認したいのですが、「撮影監督」とは具体的にどのような作業を行うのでしょうか?
端的には、ソフトウェア上で背景やキャラクターの素材を合成し、そこに様々な撮影効果を加える仕事と言っていいと思います。それを映像データに変換するまでが撮影監督のセクションですね。「撮影」という言葉は、今のようにデジタルへ移行する前の名残ですね。当時は背景が描かれた紙の上にセルを重ねて、カメラで撮影していたので。

――なるほど。時代とともに全ての作業がデジタルで処理できるようになったんですね。先ほど「撮影効果」という言葉がありました。たとえば、本作は燃え盛る炎の中で繰り広げられるアクションシーンが多く、それがまたファンの心を大きく惹きつけたと思います。撮影監督としては、どのように「炎」のエフェクトを考えて処理を行っていましたか。
炎に対してのエフェクト処理は苦労しましたね……。というのも、『炎炎ノ消防隊』はバトルシーンにおいて、敵味方いずれもキャラクターのもつ能力のほとんどが燃えるタイプの炎です。そうすると、同じ画面内に「キャラクターの能力の炎」と「それによって起こった爆発」、さらに「シーンとして燃え盛っている炎」が一度に混在することも多々あります。

――たしかに、言われてみると「炎」ひとつとっても様々な意味合いがありますね。
そうなんです。せっかく作画の方から良い素材をもらっているので、ちゃんと見せてあげたいのですが、すべてを主張しようとすると画面が処理だらけでうるさくなってしまう。バランスを考えるのが難しかったですね。

バトルシーンは「味付け」でさらに派手に!

――そこでどのように工夫をしてバランスをとりましたか。
どうしても発火の処理では、ほとんどのキャラクターの炎が同じカラーの演技になってしまうという問題がありました。そこで、同じ色の炎でも、シルエットを活かしたエフェクトや、あえて作画やVFX(※視覚効果)の素材を加工して形を変えたり、グラデーションをつけて色の情報量を多くしたり、セルに質感を入れたり……など、同じ素材でも見え方が変わるように工夫していました。

――炎の表現のバリエーションをエフェクトで増やしていったんですね。
他にも、作画素材をあえてVFX素材に置き換えたり、素材を重ねて厚みを出したり、シーンの雰囲気や構図によって素材の選択をしていました。とにかく意識していたのは、それぞれの炎の処理が一辺倒にならないようにすることですね。

――たしかに作中ではたくさんの発火場面がありましたが、どれも少しずつ雰囲気が違っていたことが印象的でした。
特にバトルシーンはこの作品でも重要な場面ですよね。そういうときは、技のインパクト時に画面のコントラストを変えたり、「タタキ」と呼ばれる粉塵や飛沫のエフェクト素材、気流の素材、CGの方からいただいた素材などを足して配置していました。この味付けをすることで画面の密度が上がって、派手なバトルに見えるように調整しているんです。

数々の経験の中で培われた「少年漫画的お約束」

――発火の場面が多いだけ苦労もひとしおだったと。ただ、元木さんの工夫やこだわりで、本作のバトルシーンがさらに迫力あるものになったんですね。
撮影監督という立場としては、作品の決まりごとや演出の方の指示通りに処理するというのが前提としてあります。

ただ、それでも個人的に「面白いかも」と思うことは一度試みるようにしているんです。外してくださいと言われることも多々ありますが(笑)。でも結果的に、処理を足したことで映えて面白い画面になることもあるので、常に遊び心をもって取り組むようにしていますね。

――元木さんはこれまで、数多くの有名なアニメ作品に携わっていますよね。中には熱いバトルシーンが印象的なものも多いです。これまで手がけた作品のご経験が、本作で活きたと感じることはありましたか。
自分の中で「少年漫画的お約束」はあるかもしれません。これまでも少年漫画が原作の作品をいくつか担当させていただいて、「こうやった方が格好よく映るかな?」と試行錯誤してきた中でつかんできたものですね。感覚的なお話なので、なかなか言葉で説明するのが難しいのですが。

もちろん作品によって雰囲気も世界観も変わってきますから、経験を活かしながらその作品の色に合わせて落とし込んで絵作りをしている、という感じですね。

さらに炎が差別化される『弐ノ章』

――撮影監督は監督や演出の方からの指示に従うことが前提としてある、というお話がありましたが、本作ではどのようなオーダーや決まりごとがありましたか?
『炎炎ノ消防隊』は、そこまで大きなオーダーはありませんでしたね。「炎のセルは極力変えない」や「背景はぼかさない」などといった決まりごとはありましたが。ただ、物語のスケールが大きく、雰囲気が異なるシーンも多く出てきたので、その都度シーンに合った画面作りのテストは行なっていました。

――実際に『壱ノ章』が放送されてみて、どのように感じましたか。
まず、たくさんの反響をいただけたことは、作品に携わっている身としてはやはり嬉しいことです。その分、良いものを作っていかなければいけない、と背筋が伸びる思いでした。撮影監督という立場でいうと、第壱話はとても強く印象に残っています。

というのも、第壱話の時点では焰ビトとのバトルなど処理が固まっていなかったので、監督と相談しつつ、試行錯誤で作った話数なんです。実際にできあがったものを見てみると、VFXの炎と作画の炎、そして防火服の青い線の光が暗い背景に映えていて、一画面の情報量の多さも十分で、いい絵面になったのではと感じました。

音楽やキャラの動きも見事に合っていて、素晴らしい幕開けになったと鳥肌が立ったことを覚えています。

――作品の処理が固まるという点でも第壱話は印象深いものだったんですね。来たる『弐ノ章』では、撮影監督としてどのような挑戦があるのでしょうか。
『弐ノ章』ではキャラクターが増えることで、炎の能力の幅もやはり広がっていくので、その能力の表現方法や差別化を考えていきたいですね。発火の場面が単調にならないようにするといった部分は変わらず意識しつつも、『弐ノ章』と『壱ノ章』では変わった決まりごともいくつかあります。その点を踏まえて、今までとは違う絵作りを試していこうと思っています。 さらに激しい派手なバトルが増えていくので、ぜひ楽しみにしていただければ!

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